原料米の持つ個性。

「それは米粒の中に蓄積された大地のエネルギー」。

それぞれの原料米が育まれた土地の力です。

私たち醸造家はそれを微生物の働きにより変化させ、人間が口に含んだ時に美味しい、と幸福を感じる日本酒を追求してきました。4000年以上前から米を食べてきた日本人は、米からできたお酒をそれぞれの時代の技術で醸造し、日本人の豊かな日々の暮らしに寄り添ってきました。

発酵の制御技術が向上した現代、今までにないもっと魅力ある日本酒を造ることができないだろうかと私自身、自問自答を繰り返しています。

その中で風の森が15年以上前から取り組んでいる方向性の一つが低精米。なぜなら

「土地のエネルギーを最も色濃く反映できる」から。それぞれのお米が持つその固有のタンパク質やミネラル分は発酵のプロセスの中で酵母の生きる力となり、そのお米の持つ個性を最大限に表現します。「磨かない事によってのみ表現できる個性」これを風の森の80 seriesでは追求して参ります。

しかし、私たちにとって精米歩合80%の原料でお酒を造るということはそのエネルギーみなぎる原料(タンパク質やミネラルが豊富すぎる)と、風の森の仕込み水(超硬水でミネラルが豊富)で糖化と発酵のバランスを取るのが非常に難しいものです。そこで私たちは従来より発酵制御力、冷却能力、の高い独自のタンクの導入を進めて参りました。しかしながらそれでも十分かと言われると、特にミネラル豊富な原料を用いる時は難しい醪管理を強いられました。

そこで私が5年前から小さな規模でテストに取り組み、3年前から実用化している面白い技術を皆様にお伝えしたいと思います。

それはウルトラファインバブル水。

洗米時の水をナノバブル化することで洗浄性を高め、米粒の周りや溝の中に付着している糠をくまなく洗浄してしまうという方法です。次のページにそれを詳しくお伝えしていきます。

 

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ウルトラファインバブル水とは

ウルトラファインバブルは、以前はナノバブルと呼ばれていました。
一般社団法人ファインバブル産業会が国際標準化を目指し「ウルトラファインバブル」の呼称を提唱しています。
UFB(ウルトラファインバブル)とはその名前の通り、極小の気泡のことです。一般的には1マイクロメートル(1/1000mm)以下のナノメートル(nm)単位のものがUFBと呼ばれています。気泡が極小のために、UFBを発生させても肉眼では透明な水に見えます。1nmは100万分の1mmを表します。地球の直径を1メートルと例えると1ナノメートルは、ビー玉(直径1.3cm)くらいの大きさに相当します。ナノバブルは一般的な目で見える泡とは比べものにならないほど小さいことが分かります。UFBは負コロイドとしての側面があり、負に帯電をしています。
このため、UFB同士は反発し合います。この性質のため、UFB同士の結合がなく、気泡数密度が減ることがありません。また、プラスに帯電する有機物を引き寄せる作用を持っており、洗浄効果があると考えられます。(引用 株式会社 ナノクスwebsite)  株式会社ナノクス

 

油長酒造では2016年よりナノクス社製50NXG3.7-S16 を導入しウルトラファインバブルによる洗米性能についてテストを重ね、現在 風の森80 seriesの一部の製品の洗米時にウルトラファインバブル水を使用しています。半導体の洗浄にもウルトラファインバブル水が使われていることが知られています。

 

現在、洗米用として5℃で50トンのウルトラファインバブル水を2日間で製造する能力を持っています。その1ml中の洗米水に含まれる見えない気泡はなんと、

300,000,000個/ml以上

にもなり、これらの見えない気泡が米粒の隙間という隙間に入り込み、過剰なミネラル分やタンパク質を取り除くことができるのです。

これにより、風の森では80%精米であっても的確に醪コントロールを行い、80%だから飲んで美味しいな、と思える「磨かない事によってのみ表現できる個性」、複雑味を兼ね備えた立体感ある味わいの風の森を表現しています。

現在 露葉風、山田錦、雄町、愛山の4ラインナップが精米歩合80%の純米酒です。それぞれの豊かな個性をお楽しみくださいませ。これからもより一層美味しい日本酒を求めて技術革新して参ります。

 

平成31年4月吉日

油長酒造株式会社 代表取締役 山本嘉彦